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弁護士法人アルファ総合法律事務所

民法改正:債務不履行解除について

2019年04月16日

民法改正:債務不履行解除について

改正民法のうち、今回は、「債務不履行解除」について、その概要を解説いたします。

1 解除規定の再構成

新民法では、契約解除の規定を、

(1)催告による解除(新民法第541条)と

(2)催告によらない解除(無催告解除)(新民法第542条)

に再構成しています。

また、無催告解除については、契約の全部解除(新民法第542条1項各号)と、

一部解除(同条2項各号)で分けて規定されます。

 

 

2 現行民法からの変更点

 

(1)一部履行不能を理由として解除できる範囲を明文化

 

新民法では,契約の全部解除ができる場合と一部解除ができるにとどまる場合が明文化されています。

現行民法の条文では、契約の一部履行不能の場合に解除できる範囲が明確ではなく、一部履行不能を理由として、

全部解除ができるとも読める規定となっています(現行民法第543条本文)。しかしながら、現行民法においても、

一部履行不能の場合の全部解除を制限する解釈がなされています。

新民法では、このような解釈を明文化し、一部履行不能の場合、原則として一部解除しかできないことを

規定しています(新民法第542条2項1号)。ただし、例外として、残存部分のみでは契約目的達成不可能な場合には、

一部履行不能であっても全部解除ができることを規定しています(同条1項3号)。

 

(2)債務者が履行拒絶している場合の無催告解除

 

新民法では、履行遅滞であっても、債務者が債務の「履行を拒絶する意思を明確に表示したとき」には、

無催告解除を認めています(全部拒絶につき、同項2号。一部拒絶につき、同条2項2号)。

現行民法では、債務者が履行拒絶をしている場合でも、催告によって翻意する可能性があることを理由に、

原則として無催告解除は認められていません。

しかしながら、債務者が履行を明確に拒絶している場合、催告をしても意味がないことも多いため、

新民法では、履行拒絶の場合の無催告解除が認められました。ただし、無催告解除が認められるためには、

履行拒絶の意思を「明確に表示」していることが必要です。そのため、履行拒絶をしていても、その意思が明確に

表示されていない場合には、現行同様、解除をするためには催告が必要です。

 

(3)解除の要件から債務者の帰責性が除外

 

新民法では、履行遅滞もしくは履行不能であれば、債務者の帰責性がない場合でも、契約解除が可能になります。

現行民法では、解除の要件として、条文上明確に債務者の帰責性が要求されている履行不能(現行民法第543条ただし書)

だけでなく、履行遅滞の場合にも、債務者の帰責性が要求されるとの解釈がなされています。

しかしながら、新民法では、条文から債務者の帰責性が削除され、解釈も変更されます。履行不能の場合を含め、

解除の要件として、債務者の帰責性は不要になります。

 

(4)軽微な債務不履行の解除不可を明文化

 

新民法では、軽微な債務不履行の場合に、それを理由とした契約解除ができないことが

明文化されています(新民法第541条ただし書)。

この点についても、現行民法では、解釈によって軽微な債務不履行の場合の解除を制限していましたが、

これを明文化したものです。

 

 

以上が、新民法での債務不履行解除についての概要ですが、実際の場面における適用関係については、

その都度ご確認いただきますようお願いいたします。

 

内容については十分留意しておりますが、正確性を保証するものではなく、本コラムに起因した損害が

発生した場合であっても、当事務所は一切の責任を負いません。

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