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弁護士法人アルファ総合法律事務所

民法改正:危険負担について

2019年06月28日

民法改正:危険負担について

改正民法のうち、今回は、(少しマニアックな分野ですが・・・)「危険負担」について、その概要を解説いたします。

 

1 危険負担とは

まず、「危険負担」とは、双務契約において、一方の債務が履行不能となった場合に、

“どちらの当事者が「危険」(リスク)を「負担」するのか”を定めた規定となります。

例えば、売買契約において、売主からの商品引き渡しが不能となった場合に、代金の支払いを受ける権利はどうなるのか、

という問題です。

 

2 現行民法での規定

(1)現行民法では、

特定物(代替物)に関する物権の設定又は移転を目的とした契約の場合(現民法第534条1項及び2項)と、

それ以外の場合(現民法第536条1項)

に区別した規定となっています。

なお、現民法第535条各項及び第536条2項も危険負担の規定ですが、今回は省略させていただきます。

 

(2)の場合について、債務者の責めに帰することができない事由によって滅失又は損傷した場合は、

債権者の負担に帰するとされています(現民法第534条1項)。

ここでの債務者は、履行不能となった債務についての債務者をいいます。例えば、売買契約の目的物引渡しが

履行不能となった場合の売主のことです。

つまり、売主の責めに帰することができない事由(例えば、天災)によって、売買契約の目的物が滅失したような

場合には、その滅失(危険)については、債権者、すなわち買主の負担とされています。

そのため、このような場合、買主は目的物を受け取ることができないにもかかわらず、

代金を支払わなければならないこととなっています。

 

(3)の場合について、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務が履行不能となった場合は、債務者は、

反対給付を受ける権利を有しないとされています(現民法第536条1項)。

つまり、双務契約の一方の債務が履行不能となった場合には、他方の債務も消滅することとされています。

 

3 改正点

改正後は、上記①と②の区分が廃止されます。

その上で、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務が履行不能となった場合は、

債権者は、反対給付の履行を拒むことができると改正されます(新民法第536条1項)。

結論として、反対給付の債務者が、債務の履行をしなくても適法であるという点は、改正前後で変わりません。

他方で、改正前は、「反対給付を受ける権利を有しない」という規定であり、債権者の反対給付債務が当然に

消滅する規定となっています。

この規定が、改正後は「反対給付の履行を拒むことができる」という規定になります。そのため、改正後は、債権者の

反対給付債務は(危険負担規定によっては)消滅しません。あくまで「履行を拒むことができる」だけとなります。

 

 

4 履行不能解除との関係

 

(1)前述のように、改正後の危険負担規定では、債権者の反対給付債務は消滅しません。

これを消滅させるためには、契約の解除をすることが必要です。

 

(2)ところで、現行民法は、危険負担が適用される場合には、履行不能解除ができません。

危険負担は、債務者に帰責性のない事由による履行不能が前提となっています。他方で、債務不履行を

理由とした契約解除をするためには、債務者の帰責性が必要なためです。

従って、現行民法では、危険負担と債務不履行解除は、原則として適用場面が異なります。

 

(3)民法改正後は、債務不履行解除をするために、債務者の帰責性は不要となります。そのため、危険負担が適用される場合でも、

履行不能を理由とした契約解除をすることができます。

 

5 危険負担の必要性

(1)前述のように、改正後は危険負担が適用される場合でも、契約解除をすることができるため、「履行を拒むことができる」

という中途半端な危険負担の規定は不要とも考えられます。

 

(2)しかしながら、契約解除をするためには、解除の意思表示をすることが必要となります(現・新民法第540条1項)。

この意思表示は、相手方に到達することが必要です(現・新民法第97条1項)。そのため、天災等、

何らかの理由で相手方に通知が到達しない場合や、通知を発することが困難な場合には、契約解除ができないこととなってしまいます。

他方で、履行拒絶は,相手方に到達する必要はありません。そのため、相手方に通知が到達しなくても、

通知を発することが困難であっても、その効果には影響がありません。

 

(3)また、解除の場合、当事者の一方が複数ある場合、契約解除はその全員から、またはその全員に

対してしなければなりません(現・新民法第544条1項)。

そして、そのうち1人でも解除権が消滅した場合、他の者の解除権も消滅します(同条2項)。

他方で、履行拒絶の場合、当事者の一方が複数ある場合でも、そのうちの1人から、または1人に対してすることも可能です。

そして、解除権が消滅した場合でも、履行拒絶をすることは可能です。

 

(4)改正後の危険負担は、このように契約解除ができない場合でも履行拒絶ができるという点で、

一定の必要性はあるものと考えられます。

 

 

以上が危険負担についての改正の概要ですが、実際の場面における適用関係については、

その都度ご確認いただきますようお願いいたします。

内容については十分留意しておりますが、正確性を保証するものではなく、本コラムに起因した損害が

発生した場合であっても、当事務所は一切の責任を負いません。

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