2019年08月30日
時間外労働(残業)について
今年の4月に一部が施行された「働き方改革」ですが、
その中に残業時間の上限規制があります。
そこで、本コラムを読んでいる皆様方は既にご存知のことかと思われますが、そもそも残業の意味について、
確認の意味も込めて解説いたします。
1 残業とは
一般的に使われている「残業」という言葉ですが、法律用語ではありません。
法律的には、「時間外労働」といいます。
この「時間外労働」には、「所定時間外労働」と「法定時間外労働」の2種類があり、
一般的にはこの2つのいずれも「残業」と言われています。
2 所定労働時間と法定労働時間
「所定労働時間」とは、労使の間で労働条件として定めた労働時間のことをいいます。
労働契約や就業規則で定められます。
「法定労働時間」とは、労働基準法第32条で規定される労働時間の上限で、1週間40時間(同条1項)、
1日8時間(同条2項)と定められています。
これらの時間を超過する労働を、それぞれ「所定時間外労働」、「法定時間外労働」といいます。
3 割増賃金(残業代)の支払義務のない残業
以上のように、一般的には所定時間外労働と法定時間外労働の2種類のいずれも「残業」といいますが、
法律によって規制されている残業は、法定時間外労働です。
そのため、例えば次のような場合には、一般的には残業と言われますが、使用者には(法律上の)割増賃金支払義務はありません
(契約によって定められている場合には当該契約によります)。
例:所定労働時間が9時00分から17時00分まで/休憩1時間の8時間拘束/実働7時間とされている場合に、
18時00分まで1時間の所定時間外労働をした場合。
→この場合、この日の労働時間は合計8時間ですので、法定時間外労働は、ありません。
そのため、割増賃金を支払う必要はなく、所定賃金を1時間分支払えばよいことになります。
このように、【所定労働時間<法定労働時間】となっている場合には、法定労働時間を超過しなければ、
時間外労働であっても割増賃金を支払う義務はありません。
4 法定時間外労働は原則禁止
当たり前のように行われている法定時間外労働ですが、法律上は原則として禁止されています。
労働基準法第32条1項及び2項のいずれも、その末尾は「時間を超えて、労働させてはならない。」と規定されているためです。
これには罰則もあり、違反した使用者には懲役刑や罰金刑が科されることもあります。
他方で、労働基準法第36条では、労使の間で書面による協定をする等必要な手続きを踏めば、同法第32条に規定される
労働時間を延長することができると規定されています。ちなみに、この協定を36(さぶ・ろく)協定ということはよく知られていますが、
労働基準法第36条に規定されていることがその語源です。
そして、ほとんどの使用者が、労働者との間で36協定をしているため、
当たり前のように法定時間外労働が行われることとなっています。
従って、36協定をしていない場合には、残業時間上限規制以前に、そもそも法定時間外労働を行わせることができません。
【時間外労働(残業)とは】について簡単に解説してきましたが、これにより、時間外労働を推奨するものではありません。
また、実際の場面における適用関係については、その都度ご確認いただきますようお願いいたします。
また、内容については十分留意しておりますが、正確性を保証するものではなく、
本コラムに起因した損害が発生した場合であっても、当事務所は一切の責任を負いません。