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弁護士法人アルファ総合法律事務所

労働時間について

2019年11月01日

労働時間について

「働き方改革」によって残業時間の上限規制が設けられましたが、残業時間を把握するためには、当然ですが、その前提となる労働時間を把握していなければなりません。
そこで、これを読んでいる皆様方は既にご存知のことかと思われますが、労働時間となるものと、ならないものの一例について簡単に解説いたします。

 

1 労働時間とは

最高裁判所の判例では、「労働基準法第32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるもの」とされています。
そして、「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ」、社会通念上必要と認められるものである限り、労働時間に該当するとされています。(最高裁判所平成12年3月9日第一小法廷判決)。
一般的には、いわゆる実働時間が労働基準法上の労働時間として扱われています。

 

2 労働時間に該当するもの・しないもの

(1)休憩時間
当然と言えば当然ですが、労働時間には該当しません。
労働基準法第34条3項により、使用者は、「休憩時間を自由に利用させなければならない」とされています。また、行政通達においても、「労働者が権利として労働から離れることを保証されている時間」とされています(昭和22年9月13日基発17号)。
労働者が自由に利用でき、権利として労働から離れることを保証されている以上、使用者の指揮命令下に置かれているとはいえないためです。

(2)手待ち時間
労働時間に該当します。
手待ち時間の例としては、作業と作業の間の待機時間や、接客業等における客待ちの時間が挙げられます。
行政通達においても、「出勤を命じられ一定の場所に拘束されている以上いわゆる手待ち時間も労働時間である」(昭和33年10月11日基収6286号)とされています。また、「休憩時間とは単に作業に従事しない手待時間を含まず」とされ(昭和22年9月13日基発17号)、手待時間は休憩時間ではなく、労働時間であるとされています。

(3)出張先への直行直帰の移動時間
労働時間に該当しないことが多いです。
基本的には日常の通勤と同様、移動時間中は仮眠、食事、読書等、何をしていても自由であり、使用者の指揮命令下に置かれているとはいえないためです。
もっとも、移動時間について具体的な指示をしている場合には、移動時間も含め、使用者の指揮命令下に置かれており、労働時間に該当すると判断されることも有り得ます。例えば、移動経路や時刻を具体的に指示する場合、移動時間中に打ち合わせを行う場合、パソコン、モバイルネットワーク等を使用した作業を行うことの指示をしている場合等です。

(4)所定労働時間中の移動時間
労働時間に該当することが多いです。
所定労働時間中の移動は、移動時間に余裕がなく、現地到着後は直ちに次の業務を行わなければならないことが多く、移動を含めて使用者の指揮命令権に基づくものといるためです。この場合、労働からの解放が保証されていないためです。
もっとも、移動時間に余裕を持たせ、その時間帯を自由に利用できる場合等には休憩時間として扱われ、労働時間に該当しないと判断されることも有り得ます。
なお、運送業や、事業所から事業所への物品の運搬等、移動そのものが業務となる場合には、当然、移動時間も労働時間に該当します。

(5)所定労働時間外の会社の飲み会
ケースバイケースですが、要注意です。
参加が強制されていれば使用者の指揮命令下に置かれているので、労働時間に該当します。例えば、取引先への接待のための飲み会で、欠席が認められないか、欠席をすると不利益な取扱いがされる、幹事を命じられ、欠席できないというような場合です。
他方で、欠席が認められ、参加が強制されていないような場合には、使用者の指揮命令下に置かれているとはいえず、労働時間には該当しません。もっとも、形式的に出欠を取っていたとしても、欠席すると不利益取扱いがされるような場合には、使用者の(黙示的な)指揮命令下に置かれており、労働時間に該当します。

 

 

以上、労働時間となるもの,ならないものの一例について簡単に解説いたしましたが、実際の場面における適用関係については、その都度ご確認いただきますようお願いいたします。
内容については十分留意しておりますが、正確性を保証するものではなく、本コラムに起因した損害が発生した場合であっても、当事務所は一切の責任を負いません。

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