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弁護士法人アルファ総合法律事務所

第三者からの情報取得手続について

2020年09月01日

第三者からの情報取得手続について

貸したお金を返してほしい,損害賠償請求をしたい等の理由により,訴訟を提起し,請求認容(勝訴)判決を得たにもかかわらず,

強制執行できる財産が不明なこともあるかと思われます。

このような場合に,債務者(相手方)の財産を調査する手段として,令和2年4月から,

「第三者からの情報取得手続」という制度が設けられました。この制度概要について,ご紹介いたします。

 

1 どのような場合に利用できるか

この手続を利用できるのは,

①債務名義を有する金銭債権の債権者,②債務者の財産について一般先取特権を有する債権者

です。また,強制執行が開始できること(債務名義の送達等)が必要です。

 

さらに,強制執行における配当又は弁済金交付で完全な弁済を受けられなかったか,

知れたる財産に対して強制執行をしても完全な弁済を受けられないことが必要です。

利用する機会としては,①が圧倒的に多いと思われます。ここで,「債務名義」とは,債権の存在および範囲が公的に

証明された文書のことをいい,具体的には,裁判所の判決,和解調書,調停調書,仮執行宣言付支払督促や公証人の

強制執行認諾文言付公正証書等が該当します。

従いまして,当事者間での合意書ではこの手続は利用できません。

 

 

2 どのような情報が取得できるか

この手続で取得できる情報は,

①不動産情報,②勤務先情報,③預貯金情報,④株式情報です。

なお,①の情報取得手続は未だ準備ができておらず,開始されておりません。

これらのうち,②の情報取得手続申立が取得できるのは,婚姻費用,養育費等の民事執行法第151条の2第1項各号の債権か,

人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の債権者に限られます。

また,①,②の情報取得手続申立をするためには,「財産開示手続」を先行させる必要があります。

「財産開示手続」とは,裁判所が債務者に対し,自己の財産を開示するよう命じ,債務者が財産を開示する手続です。

 

3 預貯金情報の取得手続について

第三者からの情報取得手続の中で,利用機会が多いと思われる,預貯金情報について,簡単に解説いたします。

(1)取得できる情報

各金融機関から取得できる情報は,預貯金の有無,ある場合には支店名,口座種別,口座番号,情報提供日時点での残高です。

(2)債務者の財産調査

この手続を利用する際,強制執行における配当又は弁済金交付が未だない場合,

知れたる財産に対して強制執行をしても完全な弁済を受けられないことが必要です。

そのため,一度,債権者自身で債務者の財産を調査することが必要です。その調査結果は,裁判所が公開している書式を利用して,

裁判所に対して報告をします。

 

この書式に従いますと,①不動産,②給与,③預貯金,④動産,⑤その他財産が調査すべき事項とされています。

このうち,①については,債務者自宅(法人の場合,本店等)の不動産登記事項証明書(登記簿謄本)の原本を提出する必要があります。

他方,②,③については,不明で調査もできない場合,「債務者から開示を受けておらず,その他,調査方法もない」

という程度の記載で問題ないと思われます(裁判所によっては不可の可能性もあります)。

また,④,⑤については,書式に「知らない」という項目があります。

 

(3)費用感(弁護士費用は除きます)

まず,裁判所に納める申立手数料(収入印紙)は,1件あたり1000円です。

預貯金の情報取得手続を申し立てる場合,情報提供した金融機関に対し,1件2000円の報酬を支払う必要があります

(支払は裁判所を介してなされますので,申立人は裁判所に対して予納します)。

また,返送用封筒として,レターパックライト(370円)を申立時に裁判所に送付する必要があります。

そして,裁判所と金融機関とのやり取りのための郵便料金が,1箇所あたり1000円前後必要です。

さらに,申立人,債務者,金融機関が法人の場合,それぞれ代表者事項証明書(資格証明書)が必要です。

これは,1通600円です。

加えて,債務者の自宅(法人の場合,本店等)の登記事項証明書も必要となり,これも1通600円です。
従いまして,1件の申し立てあたり,2500円前後の費用がかかります。

 

加えて,金融機関1箇所あたり,4000円前後の費用がかかります。

これは,当該金融機関に預貯金口座がないとの情報提供があった場合でも同様です。

なお,すべての金融機関(銀行)の情報が提供されるものではなく,あくまで当該金融機関(銀行)に関する情報が提供されるものです。

そのため,金融機関を増加する場合には,その分報酬や資格証明書取得費用が増加します。

 

(4)情報提供までの期間

あくまで現状では,申立書に不備がなければ,申し立てから2週間前後で情報提供命令

(裁判所から金融機関に対し,情報提供を命ずる決定)が出され,命令から2週間前後で申立人に情報提供がなされます。

そのため,申し立てから1箇月半から2箇月程度を見込んでいただければよろしいかと思われます。

 

(5)情報取得後の強制執行

金融機関から申立人に対して情報提供がされた旨は,申立人に最後の情報提供があってから,

概ね1ヶ月程度で債務者に通知がされます。

従いまして,情報提供後,遅くとも1箇月以内(早い方がよい)には,強制執行を申し立てなければ,

預貯金を引き出されてしますリスクが増します。そのため,情報取得手続申し立てる場合には,強制執行についても想定し,

必要な準備をしておく必要があります。

 

 

以上,第三者からの情報取得手続につき,主に預貯金の点について解説いたしましたが,実際の場面における適用関係については,

個別具体的な事情等によっても異なりますので,その都度ご確認いただきますようお願いいたします。

 

内容については十分留意しておりますが,正確性を保証するものではありません。

本コラムに起因した損害が発生した場合であっても,当事務所は一切の責任を負いません。

 

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