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弁護士法人アルファ総合法律事務所

「送達」について

2020年10月29日

「送達」について

貸金の返還請求をする,損害の賠償請求をする等,民事訴訟を提起(提訴)することもあるかと存じます。

訴訟提起をする際には,原告(訴える側)と被告(訴えられる側)を特定し,被告に対し,訴状(訴えを提起する書面)が

送達されなければなりません。この送達には,いくつか種類があり,それぞれ利用できる場面が異なります。

以下,送達の種類及びそれが利用できる場面につき,解説いたします。

 

1 前提

民事訴訟は,訴状を裁判所に提出するだけでは開始されず,訴状が被告に送達されて初めて開始されます。

この送達は,「特別送達」という郵便で行われますが,特別送達は書留と同じく対面交付となります。

そのため,原告として,被告(同居人含む)が訴状を受け取らなければ訴訟が始まらないこととなります。

しかしながら,原則どおり,被告が訴状を受け取らなければ訴訟が開始しないことになると,居留守を使って訴状を受け取らない,

そもそも被告の住所がわからない場合等には,訴訟が開始できないこととなってしまい,不都合が生じます。

このような場合に,例外として,被告が訴状を受け取らない場合でも,被告が受け取ったものとして扱うため,

送達には種類があります。これらについて,解説をいたします。

なお,以下では訴状を前提に開設しますが,訴状以外(例えば判決書)の送達においても同様です。

 

2 通常の送達

送達は,原則として,被告の住所,居所(法人の場合,本支店等の事務所・営業所)宛に,特別送達郵便で行われるのが原則です。

なお,法人が被告の場合で事務所・営業所に送達できない場合,法人代表者の自宅住所宛の送達も可能です。

 

3 就業場所送達

被告の住居所が不明か,被告が住居所において訴状を受け取らない場合,集合場所(勤務先)が判明していれば,

就業場所に対する送達が可能です。

送達先が就業場所になりますが,被告(もしくは他の従業員)が受け取らなければ送達が完了しない点は,通常の送達と同様です。

 

4 付郵便送達

被告の住居所が明らかであり,実際に居住しているにもかかわらず,被告が訴状を受け取らない場合,

書留郵便に付する送達(付郵便送達)が可能です。

付郵便送達とは,裁判所が被告に対し,訴状を書留郵便で発送した時点で,送達が完了します。

そのため,被告が実際に受け取ったかどうかにかかわらず,法律上は,受け取った場合と同様の効果が発生します。

被告が実際に居住しているかを判断するために,実際に被告の住居所を訪問し,呼び鈴を鳴らした際の応対者有無,

郵便ポスト内の郵便物の状況,電気,ガス,水道メーター,近隣からの聴取等の調査をすることが必要です。

この調査は,原告自身で行うか,探偵業者等に依頼して行います。

 

5 公示送達

被告の住居所が不明な場合,公示送達が可能です。

公示送達とは,裁判所の掲示板に,裁判所が訴状を保管しており,本人に交付可能である旨の掲示(公示)をし,

掲示を始めてから2週間後(2回目以降は翌日)に送達が完了します。そのため,被告に対し,

訴状を発送することすらできない場合でも,法律上は,受け取った場合と同様の効果が発生します。

この送達は,「最後の手段」ですので,被告の住民票の取得等,住居所の調査をし,付郵便送達と同様の調査によって,

そこに居住していないことが裁判所(書記官)に認められて初めて可能な送達方法です。

 

6 執行官による送達

被告の住居所は明らかであり,実際に居住しているにもかかわらず,その住居所宛に郵便物を発送すると,

「宛所尋ね当たらず」で返送されることが,稀にあります。この場合,通常の送達はできませんし,

郵便物を受領する機会がないため,付郵便送達もできません。

このような場合には,裁判所の執行官が,被告の住居所を訪問し,被告に訴状を送達する方法があります。

法律上は,通常の送達と同様ですが,郵便ではなく,執行官が訴状を送達するという点で異なります。

以上のとおり,被告が訴状を受け取らない場合や,被告の住居所が不明な場合でも,

訴訟提起をし,判決を得ることが可能です。

不動産を購入後,所有権移転登記を完了する前に,売主が行方不明となった,金銭を借りた者が返還することなく行方不明となったが,

その者は不動産を所有しているため強制執行をしたい,時効が近く,訴訟提起しなければ請求権が消滅してしまう,

といった場合には,被告の住居所が不明な場合でも,訴訟提起が必要となります。このような場合には,

一度ご相談なさることをお勧めします。

 

以上,民事訴訟の送達につき,解説いたしましたが,実際の場面における適用関係については,

個別具体的な事情等によっても異なりますので,その都度ご確認いただきますようお願いいたします。

内容については十分留意しておりますが,正確性を保証するものではありません。

本コラムに起因した損害が発生した場合であっても,当事務所は一切の責任を負いません。

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