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弁護士法人アルファ総合法律事務所

使用者責任について

2021年06月30日

使用者責任について

交通事故等,被用者(従業員)が,使用者(会社)の事業のために第三者に損害を与えた場合,その本人だけでなく,

会社も賠償責任を負うことがあり,これを使用者責任といいます(民法715条1項)。

 

今回は,使用者責任のうち,求償関係について,簡単に解説いたします。

1 会社が支払った場合の従業員に対する求償

従業員が,会社の事業のために第三社に損害を与え,その賠償を会社がした場合,会社から従業員に対して求償することができる場合があります。

⑴ 求償できる範囲

会社は,「事業の正確,規模,施設の状況,被用者の業務の内容,労働条件,勤務態度,加害行為の態様,

加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし,損害の公平な分担という見地から

信義則上相当と認められる限度において」,従業員に対して求償ができます(最高裁判所昭和51年7月8日第一小法廷判決)。

 

⑵ 求償が制限される根拠

従業員の活動により利益を上げ,その利益が会社に帰属する以上,従業員の活動により発生した第三者の損害も会社が責任を負担すべきという

「報償責任」,「危険責任」の考え方によるとされています。

 

⑶ 結論
以上より,従業員が第三者に損害を与え,会社が使用者責任に基づく損害賠償をした場合,その全額を従業員に求償できるとは限らず,

全額もしくは一部について会社負担となる場合があります。

 

2 従業員が支払った場合の会社に対する求償

従業員が,会社の事業のために第三社に損害を与え,その賠償を従業員がした場合,従業員から会社に対して求償(「逆求償」ともいいます。)

することができるかどうかは,判断が分かれていました。

 

⑴ 求償できないと判断する場合の根拠

求償できないと判断する根拠は,本来,損害賠償は加害者である従業員が義務を負うもので,会社は義務を負わないという考えが基礎となっています。

そのため,主債務者と保証人の関係と同様,会社(保証人)が支払った場合,従業員(主債務者)に対して求償できますが,

従業員が支払った場合,当然の義務を果たしたに過ぎず,本来義務を負わない会社に対して求償することはできないという結論となります。

 

⑵ 求償できると判断する場合の根拠

求償できると判断する根拠は,会社から従業員に対する求償と同様,会社の「報償責任」,「危険責任」の考え方によるものです。

会社が賠償をした場合,従業員に対する求償が制限されるということは,会社の負担があるということです。

そのため,従業員が賠償した場合には,会社の負担分の支払いを求め,求償することができるということになります。

また,会社が賠償した場合と従業員が賠償した場合とで,会社の負担に関する結論が異なることは妥当ではないという考え方も根拠の一つです。

 

⑶ 最高裁判所令和2年2月28日第二小法廷判決

従業員から会社に対する求償について,最高裁判所として初の判断をした事例です。

この判例は,「使用者責任は,使用者が被用者の活動によって利益を上げる関係にあることや,自己の事業範囲を拡張して

第三者に損害を生じさせる危険を増大させていることに着目し,損害の公平な分担という見地から,その事業について

被用者が第三社に加えた損害を使用者に負担させることとしたもの」とし,「このような使用者責任の趣旨からすれば,

使用者は,・・・被用者との関係においても,損害の全部又は一部について負担すべき場合がある」と判断しています。

また,会社が賠償した場合には従業員に対して求償できるにもかかわらず,従業員が賠償した場合には会社に対して求償できないという結論となることは

相当でないと判断し,おおよそ,上記2⑵の根拠により,従業員から会社に対する求償を認めました。

なお,求償できる範囲については,上記1⑴によって判断されます。

 

⑷ 結論

上記最高裁判所判例により,従業員から会社に対する求償が明確に認められました。そのため,会社が先に賠償しても,

従業員が先に賠償しても,多くの事案において,(求償の範囲は別として,)会社は損害賠償義務を負うことになると思われます。

 

以上,使用者責任に係る求償関係について簡単に解説いたしましたが,実際の場面における適用関係については,

個別具体的な事情等によっても異なりますので,その都度ご確認いただきますようお願いいたします。

内容については十分留意しておりますが,正確性を保証するものではありません。

本コラムに起因した損害が発生した場合であっても,当事務所は一切の責任を負いません。

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