load

弁護士法人アルファ総合法律事務所

親族内承継(6)事業承継に絡む税制(4) ~ 株価の評価(2)非上場株式評価 ~

2021年08月20日

親族内承継(6)事業承継に絡む税制(4) ~ 株価の評価(2)非上場株式評価 ~


皆様こんにちは。

弁護士法人アルファ総合法律事務所の代表弁護士・税理士の保坂光彦です。

 

さて、前回株式の時価と取引価格の差が大きい場合に『みなし贈与課税』が適用される場合があることについてお話しましたが、

そもそも株式の評価(時価)とはどのように決められるものなのでしょうか。

この点、上場企業であれば、株式市場における取引価格をそのまま「時価」とすることも可能ですが、

非上場株式に関してはそういうわけにもいきません。

 

では、このような場合、株式をどのように評価するかといいますと、株式の評価方法そのものについては、

評価の目的によって、「企業価値評価ガイドライン」(公認会計士が裁判等で株式の評価をすることを求められた際に用いるため、

日本公認会計士協会が取りまとめたもの)や、中小企業庁が取りまとめた「経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン」なども

ありますが、少なくとも贈与税・相続税との兼ね合いでは、国税庁が作成している「財産評価基本通達」の

「取引相場のない株式等の評価」に基づいて評価することになります。

 

とはいえ、『非上場株式』とは上場株式以外の株式全てを指す総称ですので、非上場株式の中には、

上場株式に勝るとも劣らない規模の大会社から、個人企業並みの小規模会社までその実状は千差万別で、

到底一括りにできるものではありません。

そのため、非上場株式の評価方法を定める財産評価基本通達では、取引相場のない非上場株式を規模に応じて

『大会社』『中会社』『小会社』に区分し、それぞれに即した評価方式を定めています。

 

また、非上場株式を贈与や相続で取得した株主が、その後「同族株主」となるか、そうでないかによっても具体的な評価方法が変わってきます。

これは、「同族株主」であるか否かで会社経営への影響度(支配力)や株式保有目的も全く異なってくるため、

その実態に応じた評価をする必要があるからとされています。

支配権を有する同族株主が取得する株式の評価は、会社の業績や資産内容等を反映した原則的評価方式(『類似業種比準方式』、

『純資産価額方式』及びこれらの併用方式)により評価することになります。

より具体的には、大会社には事業内容が類似している上場会社の株式の価額を参考にする評価方法である『類似業種比準方式』、

小会社には会社が解散した場合の価値に着目して評価する方法である『純資産価額方式』が適用されます。

 

中会社は、その中でさらに大・中・小に細かく区分され、類似業種比準方式と純資産価額方式を一定比率で組み合わせて

評価額を算定することになります(ちなみに、大会社、中会社でも、仮に純資産価額方式の評価額のほうが低い場合には、

純資産価額を評価額とすることもできるとされていますが、一般的には、純資産価格方式の方が高めの評価額が算出されますので、

できるだけ大きい会社区分に入れるよう頑張ることになります。)。

 

一方、「同族株主等以外の株主等」については、上記基準によらず、例外的に配当額に基づいて評価する配当還元方式を採用することが

できるとされています(一般的に特例的評価方式=配当還元方式による評価の方が株価は低くなる傾向にありますので、こちらを採用します。)。

なお、保有している資産の大半が株式や土地であるなど、資産内容が特異な会社、あるいは開業間もない会社・休眠中・清算中である等、

営業状態が特異な会社に関しては、通常の事業活動をしていることを前提とした原則的な評価方法は馴染まないため、

個別にその評価方法が定められていますが、その多くは純資産方式を基本とするものとなり、

結果として株価評価も高めとなってしまう傾向があるとされています。

 

以上の点を踏まえますと、余計な税負担を回避するという観点からは、株式の譲渡ないし贈与に先立って、

綿密な評価シミュレーションをするのは勿論のこと、場合によっては、会社の区分をより大きい側(評価額が相対的に低くなりやすい側)に

寄せるための「調整」が重要になってくるかもしれません。

 

(続く)

メルマガ・ニュースレターの登録はこちらメルマガ・ニュースレターの登録はこちら