2021年10月27日
育児・介護休業法改正について
育児・介護休業法が改正され,令和4年4月1日,10月1日,令和5年4月1日の3段階に分けて施行されます。
今回は,改正の概要について簡単に解説をいたします。
第1 令和4年4月1日施行
1 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
育児休業及び出生時育児休業(いわゆる「男性版産休」。)(以下,「育児休業等」といいます。)の申出が円滑に
行われるようにするため,事業主は,以下のいずれかの措置を講じることが義務がとなります。
これらの措置は,可能な限り,複数の措置を行うことが望ましいとされています。
① 育児休業等に関する研修の実施(育児休業対象者に限りません)
② 育児休業等に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
③ 自社の労働者の育児休業等取得事例の収集・提供
④ 自社の労働者へ育児休業等制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
また,短期だけでなく,1箇月以上の長期の休業取得を希望する労働者が希望するとおりの期間の休業の申出をし,
取得できるように配慮しなければなりません。
2 本人または配偶者の妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置
本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して,事業主は育児休業制度等に関する以下の事項の
周知と休業の取得以降の確認を,個別に行うことが義務となります。
なお,個別に周知し,意向確認をしたとしても,取得を控えさせるような形である場合には,義務を履行したことにはなりません。
(1)周知事項
① 育児休業等に関する制度の周知
② 育児休業等の申出先
③ 育児休業給付に関する事項
④ 労働者が育児休業等期間について負担すべき社会保険料の取扱い
(2)個別周知・意向確認の方法(以下のいずれか)
① 面談
② 書面交付
③ ファクシミリ
④ 電子メール等
3 契約社員等,有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
有期雇用労働者の育児休業取得要件は,現行では
① 引き続き雇用された期間が1年以上
② 子が1歳6箇月になるまでの間に契約が満了することが明らかでない
の2つの要件を満たすことが必要ですが,改正後は①が撤廃されます。
そのため,例えば入社半年の労働者でも,②を満たせば育児休業取得が可能となります。
第2 令和4年10月1日施行
1 出生時育児休業の創設
現行の育児休業とは別に,子の出生後8週間以内の期間において,4週間まで取得可能な制度です。
申出期限は,原則として休業の2週間前までなので,現行の育児休業の申出期限よりも後となります。
また,改正後の育児休業と同様,出生時育児休業も分割して2回まで取得可能です。
そして,出生時育児休業期間中は,労使協定の締結により,労働者が合意した範囲で,休業中に就業することも可能です。
2 育児休業の分割取得
現行では,育児休業は1回に限りで再取得はできませんが,改正後は,分割して2回まで取得することが可能となります。
3 育児休業延長の場合の休業開始日柔軟化
保育所に入所できない場合等に認められている1歳以降の育児休業延長につき,現行の休業開始日は,
1歳,1歳半の時点に限定されています。そのため,例えば2歳まで育児休業を延長する場合,育児休業開始から2歳までの間,
連続して育児休業を取得することが必要です。
改正後は,開始日が柔軟化され,一定の要件の下,1歳,1歳半の時点で育児休業中でない場合でも,
育児休業が取得可能となります。そのため,例えば父親と母親が交代で育児休業を取得するようなことが可能となります。
4 1歳以降の育児休業再取得
現行では,1歳以降の育児休業再取得は認められていませんが,改正後は,特別な事情がある場合の再取得が認められます。
第3 令和5年4月1日施行
従業員数1000人超の企業は,育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられます。
以上,育児・介護休業法の改正について,簡単に解説いたしましたが,実際の場面における適用関係については,
個別具体的な事情等によっても異なりますので,その都度ご確認いただきますようお願いいたします。
内容については十分留意しておりますが,正確性を保証するものではありません。
本コラムに起因した損害が発生した場合であっても,当事務所は一切の責任を負いません。