2021年11月22日
会社組織いろいろ~各論(1)~
皆様こんにちは
弁護士法人アルファ総合法律事務所の代表弁護士・税理士の保坂光彦です。
さて、前回は「会社」には様々な種類があることをお伝えしましたが、今回からは、それぞれの具体的な特徴を
見ていきたいと思います。
まず最初は、会社の代表格ともいうべき『株式会社』です。
改めていうまでもなく、日本で最も数が多いメジャーな会社形態であり、通常「会社」といえば、この「株式会社」を思い浮かべることでしょう。
当然、「株式会社」という名前を聞いたことがないという人はほとんどいないでしょうから、
他の類型の会社と違って、名前を見た際に「?」というようなリアクションを受けることも、
『よく知らない会社形態だから信頼できない』などと言われてしまうこともないでしょう。
その一方で、株式会社には、他と比較して色々と法的な規制が存在しているのですが、その辺りについては、
あまり詳しく知られていない所があるかもしれません。
▼例えば・・・
会社を設立するに際しては、会社の根本的な部分を定めるための「定款」を作成しなければなりませんが、
株式会社の定款に関しては、公証人による認証手続きが必須とされています(この点は、後のご紹介する合同会社や合名・
合資会社などには存在しない要件となります。)。
また、取締役や監査役といった役員に関して、定款で特別な定めをしない限り、原則として取締役は2年、
監査役は4年の「任期」(定款でこれを短縮することや、株式譲渡制限会社については10年まで延長する事は可能)
が定められており、その任期が終わる度に、再任あるいは役員変更のうえ、その旨の登記をしなければなりませんが、
このような制約も、合同会社や合名・合資会社などには存在しておりません(なお、この登記を長い間放置したままにすると、
「休眠会社」の扱いとなってしまい、法務局により登記が抹消されてしまいますので注意が必要です。)。
さらに、株式会社固有の制度としては、株式会社は定時株主総会の終結後遅滞なく、決算の公告を行わなければならない
と定められている点も挙げられます(会社法第440条第1項)。
ここは誤解もされやすいところなのですが、この「決算の公告」とは、決して株式上場をしていたり規模の大きな会社にだけ
義務付けられているわけではなく(もっとも、そういった会社は、別の法律により更に様々な情報開示を求めらておりますが・・・。)、
上場か非上場、あるいは、公開会社か非公開会社かに関わらず、基本的に全ての「株式会社」は決算公告を行わなければならない
とされているので、注意が必要となります。
そのほか、スペースの関係上、詳細は省きますが、利益が出た際における出資者への還元方法に関しても、
他の会社形態と比較して制限が多くなっていたり、(必ずしも必須の存在とはされていませんが)取締役会や監査役会などといった
株式会社特有の組織が出てくるのも特徴といえます。
こういった数々の違いが存在するのは、株式会社が「所有と経営の分離」及び「間接有限責任」という原則に基づいていることを
反映しているためとされています。
すなわち、株式会社を設立するにあたっては、会社に出資をすることにより「株主」としての地位が与えられ、
利益が出れば利益の配当が受けられるようになる一方、経営参加としては、株主総会における議決権行使など、
あくまで法律や定款に決められた範囲に止まります(実際の経営は、選任された取締役が行います。)。
その反面、万が一会社が倒産したような場合であっても、出資者としての立場で債権者から返済を求められるようなことにはならず、
単に出資したお金が返ってこないだけで済むという形で責任が限定されています。
このように、出資者と経営者との間の役割分担を徹底しつつ、会社債権者等の利害関係人も保護するため、
前述のような各種制度が存在しているということになります(もっとも、上場企業や大規模企業などと異なり、
一般的な中小企業においては、実際に「所有と経営の分離」が為されているわけでもないというケースも、
決して少なくありませんが・・・。)。
*ちなみに、このような株式会社に対する各種制限も、以前と比較すれば相当に緩和されてきています。
有名なところですと、会社設立に際して「発起人」(会社設立時の出資者)が、最低7人以上いなければならないであるとか、
「資本金」が最低1000万円以上なければならない(現在では発起人は1人でも大丈夫ですし、出資金も1円から可能とされており、
後に紹介する有限会社と逆転現象が起こっています。)といった規制がありましたが、それらが撤廃されたことにより、
株式会社の設立が相当容易になったということがいえます。
(続く)