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弁護士法人アルファ総合法律事務所

パワハラ防止法について

2021年12月24日

パワハラ防止法について

令和4年4月1日から,パワハラ防止法(正確には「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の

充実等に関する法律」(以下「法」といいます。)の一部です。)が中小企業にも適用され,

職場のパワハラ対策を講じることが義務化されます。今回は,パワハラ防止について簡単に解説をいたします。

 

1 パワーハラスメントとは

パワーハラスメント(以下「パワハラ」といいます。)とは,職場において行われる,

①優越的な関係を背景とした言動であって,

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより,

③労働者の就業環境が害されるものであり,

①から③にすべて該当するものをいいます(法第30条の2第1項)。

なお,客観的にみて,業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については,②に該当せず,パワハラには該当しません。

 

2 上記①から②の各要素について

⑴ ①について

言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗または拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものです。

代表例としては,部長,課長等の役職者から,部下(いわゆる平社員)に対する言動です。

他方,同僚同士,あるいは,部下から上司に対する言動であっても,その同僚や部下が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており,

同僚や部下の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な状況,あるいは,同僚または部下が集団で行動し,

抵抗または拒絶することが困難な状況等の場合には,その同僚や部下の言動が該当することもあります。

 

⑵ ②について

社会通念に照らし,当該言動が明らかに業務上の必要性がない,または,必要性があっても態様が相当でないものをいいます。

⑶ ③について
労働者が身体的または精神的に苦痛を与えられ,労働者の就業環境が不快なものとなったため,能力の発揮に重大な

悪影響が生じる等,当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。

なお,この判断に当たっては,言動を受けた当人の主観のみではなく,「平均的な労働者の感じ方」,すなわち,

同様の状況で当該言動を受けた場合に,社会一般の労働者が,就業する上で看過できない程度の支障が生じたと

感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当とされています。

 

3 事業主が講ずるべき対策

事業主は,以下の措置を必ず講じなければなりません。

⑴ 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

① 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し,労働者に周知・啓発すること

② 行為者について,厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し,労働者に周知・啓発すること

 

⑵ パワハラの相談に応じ,適切に対応するために必要な体制の整備

③ 相談窓口をあらかじめ定め,労働者に周知すること

④ 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

 

⑶ 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること

⑥ 事実関係の確認ができた場合,速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと

⑦ 事実関係の確認ができた場合,その後,行為者に対する措置を適正に行うこと

⑧ 事実関係が確認できなかった場合も含め,再発防止に向けた措置を講ずること

 

⑷ その他の併せて講ずべき措置

⑨ 相談者・行為者等のプライバシー(性的指向・性自認や病歴,不妊治療等の機微な個人情報も含む。)を

保護するために必要な措置を講じ,その旨労働者に周知すること

⑩ 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め,労働者に周知・啓発すること

 

以上,パワハラ防止法について,簡単に解説いたしましたが,実際の場面における適用関係については,

当該事案における様々な要素を総合的に考慮して判断することが必要ですので,個別具体的な事情等によって異なります。

そのため,その都度ご確認いただきますようお願いいたします。

 

内容については十分留意しておりますが,正確性を保証するものではありません。本コラムに起因した損害が発生した場合であっても,

当事務所は一切の責任を負いません。

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