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弁護士法人アルファ総合法律事務所

事前確定届出給与の 落とし穴

2026年02月10日

事前確定届出給与の落とし穴

 

合同会社などで支払われる事前確定届出給与を損金算入するためには事前の準備が必要です。

後になって損金に算入できなかったということにならないよう気をつけましょう。

 

はじめに

合同会社や特例有限会社など、役員の任期が定められていない会社において事前確定届出給与を支払った場合、

損金算入ができません。事前確定届出給与を検討する場合には十分な事前の準備が必要です。

 

事前確定届出給与とは

役員に支給する賞与は、原則として損金算入が認められません。

しかし、例外として、「事前確定届出給与」を利用すれば、あらかじめ支給時期と金額を決定し、

所轄税務署長へ届出を行うことにより、その支給額が損金として取り扱われます。役員報酬を柔軟に

設計したい企業にとって、非常に重要な制度といえます。

 

制度趣旨としては、恣意的な利益調整を防ぎつつ、適正に計画された役員報酬であれば損金算入を認める

という考え方に基づいています。この点を理解せずに制度を利用しようとすると、届出期限や書面管理が軽視され、

結果的に制度を活かせなくなってしまいます。

 

合同会社・特例有限会社に潜む制度上の問題点

そして、合同会社や特例有限会社には注意すべき点があります。それは、会社法上、役員任期が

存在しないという特徴です。また、合同会社には、法律で定められた機関として「社員総会」が存在しません。

 

株式会社の場合、定時株主総会後1か月以内または事業年度開始日から4か月以内のいずれか早い日までに

届出を行うことができます。しかし、合同会社や特例有限会社にはそもそも役員任期という概念が存在せず、

また、合同会社には株式会社のような定時株主総会も開催義務がありません。

 

そのため、制度上求められる届出期限が発生せず、結果として届出自体を行うことが困難な状況に陥ります。

その結果、たとえ支給計画を立てていても、事前確定届出給与として損金算入が認められないという問題が生じるのです。

 

この点は実務でも見落とされやすく、「届出の手続きさえすればよい」と誤解されたまま賞与を支給してしまい、

後になって不利な税務判断が下される例が散見されます。制度の存在を知っていても前提条件を

欠いていたため使えなかったというケースは税務相談の中でも多いのが実情です。

 

損金算入できないとどうなるのか

事前確定届出給与が利用できない場合、役員に支給した賞与は全額が損金不算入となり、法人税の負担が増加します。

特に役員報酬の調整を節税手段として考えている中小企業では、想定外の税負担が生じるケースが少なくありません。

実務では、「制度を理解していたが、届出期限がないことを知らなかった」という誤解から、

多額の税負担が発生する例も見受けられます。

 

賞与は一度支払ってしまうと取り消しが困難であるうえ、対応を誤ると会社の資金繰りにも影響が及ぶため、

注意しなければなりません。

 

対応策と今後の検討ポイント

この問題を解決するには、定款変更を行い、役員に任期を設ける、社員総会を定めるなどの

制度的な整備が必要です。任期が設定されれば、「任期開始日」という基準日が生まれ、事前確定届出給与の

届出期限が確定します。また、役員報酬の見直し時期や決算スケジュールを踏まえ、制度に適合する形で

運用する方法も検討に値します。合同会社や特例有限会社の形態自体が問題なのではなく、仕組みを整えないまま

役員賞与を支給してしまう点がリスクであると押さえておく必要があります。

 

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