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弁護士法人アルファ総合法律事務所

働き方改革関連法案

2018年10月19日

働き方改革関連法案

平成30年6月29日、参議院において「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」(いわゆる「働き方改革関連法案」)が可決成立しています。

同法案は、「労働契約法」や「労働基準法」のほか、「雇用対策法」「労働時間等設定改善法」「労働安全衛生法」「じん肺法」「パートタイム労働法」「労働者派遣法」といった様々な労働関連法の改正を一括して行うものであり、その趣旨として、

①働き方改革の総合的かつ継続的な推進
②長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等
③雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

という3つを大きな柱に据えています。

これらの改正は、平成31年(2019年)4月1日から順次施行されていくことになりますので(後でも触れますように、大企業と比較して中小企業では一部について猶予期間が多少長めに取られています)、いずれにしても、各企業において早急に対応してく必要があります。

注:ここで「大企業」「中小企業」とは、業種ごとに資本金と常時雇用する労働者数の要件が定められており、どちらか一つにでも該当する場合には「中小企業」、いずれにも当てはまらない場合を「大企業」というように定義されています。

業種 資本金 労働者
小売業 5000万円以下 50人以下
サービス業 5000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他 3億円以下 300人以下

以下では、中小企業の皆様にとって特に重要となる改正・対応ポイントについて説明していきたいと思います。

その1 ~時間外労働の「上限」規制~

一部の職種を除いて、残業(時間外労働)は原則として「月45時間 年360時間」が法律上の「上限」となり、繁忙期など一時的に特別な対応が必要と予想される場合においては、労使協定により

①単月で休日労働を含み100時間未満
②2~6月の平均で休日労働を含み80時間以内
③月45時間の「原則」を上回るのは年6回まで
④年合計720時間までの条件を満たす範囲内で延長ができる

という枠組みになっています。

そして、この「上限」を超えた場合、雇用主に対し6か月以下の懲役又は30万以下の罰金が課される罰則付きの規制となりますので、現時点でどのような体制になっているかという確認と、そこから新しい制度への変更など、早急に対応していく必要があると思われます。

なお、この制度の施行日は、大企業が2019年4月1日となりますが、中小企業に関して2020年4月1日からとされています。

その2 ~時間外労働の割増賃金~

その1で述べた時間外労働の上限と関連して、これまで「月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%)」に関しては、「大企業」のみの適用とされていましたが、2023年4月1日以降はこれまで猶予されていた中小企業にも対しても例外なく適用されることとなりますので、この点に関しても対応が必要となります。

その3 ~「高度プロフェッショナル制度」の新設~

この制度は、高度の専門的知識を必要とする業務に従事し、職務の範囲が明確で一定の年収(年収1075万円以上)を有する労働者に関しては、本人の同意、年間104日以上で4週で4回以上の休日が確実に取得出来ることなどを要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金などの規定の適用が除外される(事実上、残業制限がなくなる)というものです。

なお、この制度に関しては、大企業と中小企業の区別はなく、いずれも2019年4月1日から適用となりますので、もし同制度の適用をお考えの場合には、対象となる労働者との協議など、速やかに準備を始めておくべき段階と思われます。

その4 ~「同一労働同一賃金」の原則~

これまで存在していた、いわゆる正社員(正規雇用労働者)とそれ以外の者(非正規雇用労働者)との間で実質的な職務内容が同一であっても賃金や待遇に格差があるという問題を解消するため、今後は、原則としてたとえ雇用形態がどのような内容・性質のものであっても、同一の働きに対しては同じ給与等を支払わなければならないことが規定されました。

また、正社員と仕事の内容や配置転換の範囲、仕事内容の変更の範囲が異なる場合であっても、正社員と比較して不合理な待遇差を設けることが禁止されます。

詳細は、今後厚生労働省が定める「ガイドライン」により示されていくと思われますが、いずれにしても、雇用主としては、格差を解消するための「有期雇用労働者の均等待遇規定」を整備しなければならないことになります。

なお、この制度の施行日は、大企業が2020年4月1日、中小企業が2021年4月1日となっていますが、実は、改正法成立よりも少し前に、ほぼ同趣旨の最高裁判決が出ていますので、改正法の施行までは格差が当然に許容されるというわけではないことに注意が必要です。

また、この点と関連して、短時間労働者や有期雇用労働者、派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差がある場合に、その内容や理由等について説明することが義務化されることになっています。

その5 ~有給休暇の消化義務~

10日以上の年次有給休暇が与えられる労働者に対して、そのうち少なくとも5日を取得させる(取得を促すか、会社側が時期を指定すること)が義務付けられることになりました。なお、今回の法改正による義務違反について、対象となる従業員に有給休暇の指定等をしなかった場合には、30万円以下の罰金が課される場合がありますので、この点に関しても有給休暇の消化状況の確認とともに、必要に応じて社内での有給休暇取得に関するルール作りを進める必要があると思われます。


以上のように、今回の改正においては、様々な点に関して、これまでとは大きく異なる対応や、社内体制自体の変更を求められることになりますが、弁護士法人アルファ総合法律事務所では、個別具体的な改正への対応方法や、それに伴う体制変更の進め方そのものについて、随時ご相談をお受けしておりますので、お気軽にご連絡ください。

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