2022年01月21日
会社組織いろいろ~会社の種類~各論(3)合同会社
皆様こんにちは。
弁護士法人アルファ総合法律事務所の代表弁護士・税理士の保坂光彦です。
さて、今回は「会社」のなかで、最も新しい形態である「合同会社」についてお話していきたいと思います。
合同会社は、平成18(2006)年の『会社法』が施行されるのと同時に、新しく誕生した形態となります。
アメリカでは類似の会社形態がLLC(Limited Liability Company)と呼ばれているため、日本でも合同会社を指して
「日本型LLC」と呼ばれることがあります。
ちなみに、以前に紹介した株式会社や合名・合資会社は『商法』により、有限会社については『有限会社法』という
別の法律により誕生した会社となります。
合同会社の特徴を端的に表すと、有限責任と自由度の高さを併せ持つ、いわば株式会社と合名会社・合資会社
それぞれの良いとこ取りをしたと評すべき形態といえます。
すなわち、合同会社は株式会社同様に間接有限責任制を採用しており、万が一会社が倒産したような場合であっても
(もともと出資している分以上には)債権者への返済義務を負わない・・・という形で責任が限定されているうえに、
株式会社のような規制や制限も少なく、柔軟な組織設計も可能ということになります。
具体的には、合同会社には、株式会社のように株主総会や取締役会といった組織の設置義務、役員の任期、
決算書の公表義務といった負担もありませんし、付随的な問題として、設立に際して公証人の定款認証が不要であるとか、
登録免許税が株式会社の15万円に対し、合同会社は6万円で済んでしまうといった費用的な負担の少なさも見逃せません。
さらに、出資者(=社員)の立場に関しても、株式会社における「株主」が株主総会で決議する一定の事項しか決めることができないのに対し、
合同会社では社員である限り原則として業務執行権を有し経営全般に参画できるとされている点や
(もちろん、敢えて「代表社員」というポジションを設定することもできます)、会社から離れたいと考えた場合、
株式会社では原則として「出資金の払い戻し」ということはできず、他者に株式を購入してもらうしかないのに対し、
合同会社ではストレートに「出資金の払い戻し」という形をとることができるという点においても、
大きな違いが存在しているといえます。
このように、合同会社は、まさに良いとこ取りというべき状態になっておりますが、当然、一定のデメリットもあります。
まず、合同会社という形態自体が生まれて間もないものであるため、どうしても認知度や信頼度が相対的に低くなってしまい、
その結果として取引等に際して間接的な不利益を受ける場合があるという点が挙げられます
(もっとも、近年では敢えて合同会社の形を選択する大手企業・有名企業も増えてきておりますし、いずれは
デメリットとならなくなる日も来るのではないかと思われます。)。
なお、当然のことですが、合同会社のままでは株式市場に「上場」することができません。
また、先ほど挙げたメリットがそのまま反対にデメリットとなってしまう場合も考えられます。
例えば、共同出資者の一部から払戻請求を受けてしまうと、会社側(会社に残る側)としては困るケースも出てくるかもしれませんし、
組織形態が柔軟にできるとされているが故に、その形態によっては、出資者間に意見の食い違いが生じた際、
多数決や出資額の多寡等により迅速な意思決定することが難しくなり、結果として会社自体が
立ち行かなくなってしまうリスクも完全には否定できません。
そのため、表面的なメリットデメリットだけに留まらず、将来的にどのような会社にしていきたいか・・・
といったビジョンも含めて、組織形態を選択していくことが大切になってくるといえます。
(続く)