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弁護士法人アルファ総合法律事務所

会社組織いろいろ~会社の種類~各論(4)特例有限会社

2022年02月16日

会社組織いろいろ~会社の種類~各論(4)特例有限会社


 

皆様こんにちは。

弁護士法人アルファ総合法律事務所の代表弁護士・税理士の保坂光彦です。

これまで、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社それぞれの特徴などについてお話してきましたが、

今回は最後に残っている有限会社についてとなります。

さて、有限会社についてまず最初にお伝えすべき点は、もはやこれから新たな「有限会社」を設立することは

不可能である、ということです。

有限会社は、かつて1940年(昭和15年)に施行された、その名も「有限会社法」という名前の法律により規律されていましたが、

同法は「会社法」の施行に伴い、2006年(平成18年)5月1日をもって廃止されています。

 

これにより、有限会社の新設自体は認められなくなりましたが、既に設立されていた有限会社については

「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」という法律により、株式会社の一種である

「特例有限会社」として、今後も存続し続けることになっています。

 

とはいえ、これまで有限会社であったものが、今後は完全に株式会社と同一の扱いを受けることになるというわけではありません。

まず、名称に関しては、自動的に「株式会社」へと変更されるわけではなく、むしろ「有限会社」の名称を

そのまま残さなければなりません(なお、この縛りを解消して、株式会社に名称を変更するためには、有限会社としての

解散登記と、新しい株式会社としての設立登記をそれぞれする必要がありますが、実態としての会社そのものが消滅するわけでは

ないため、通常の解散などの場合のような債権者保護手続は不要とされています。)。

また、「役員の任期が存在しない」「各取締役一人一人それぞれが会社の代表者となる」「決算公告が不要」といった点は、

旧有限会社法の規律にそのまま従う形となりますので、その点で株式会社よりも柔軟な運営が可能となりますが、一方で、

総会の特別決議要件に関しては「総株主の半数以上で当該株主の議決権の4分の3以上」と、

株式会社よりも高いハードルが維持されています。

 

ちなみに、会社法施行前の株式会社は、資本金の最低額として1000万円が必要であったのに対し、

有限会社の最低資本金は300万円と相対的に少額で済むという点がメリットの一つとして挙げられていました。

ところが、現状では株式会社の方が最低1円の資本金でも設立が可能となったこととの対比で、

むしろ有限会社のほうが資本金の最低ラインが高くなるという、逆転現象が生じるに至っています。

そうなりますと、会社の信頼性について「資本金の額がどれだけ多いか」や「設立後にどれだけ会社が存続しているか」

といった観点も評価しようとする人がいた場合、名称が有限会社であるというその時点で、「最低でも資本金が300万円以上ある」

「設立後少なくとも15年以上経過している」という意味においては、下手な新設株式会社よりも

よほど信頼できるということになります(もちろん、実際には、そのような短絡的・一面的な評価をすることはないと思いますが・・・。)。

 

最後に、これまで見てきた株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、有限会社から、別の会社形態に変更することの

可否について、お話しておきたいと思います。

この点、以前は「株式会社と有限会社」「合名会社と合資会社」それぞれのグループ内部でのみ組織変更が可能とされていました。

これは無限責任を負う社員の有無という点で、それぞれのグループ間では、組織形態が根本的に異なっていたことが要因と思われます。

しかし、現在では、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社それぞれの間で組織変更が可能とされています。

そのため、状況に応じ最初は比較的簡易な合同会社で設立運営をしたうえで、ある程度会社が成長してきた際に株式会社への

組織変更を行う・・・といったビジョンを打ち立てることも十分に「有り」ということが言えます。

 

※なお、前述のとおり、新たな有限会社を設立することが不可能であるため、他の会社形態から有限会社への組織変更も

認められておらず、有限会社からの変更は株式会社のみが認められています(一度株式会社へ変更した後に、さらに

別の会社へ組織変更することは可能です。)。

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