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弁護士法人アルファ総合法律事務所

どんな研修が 労働時間となるか

2023年09月15日

どんな研修が労働時間となるか

 

労働者に対して実施する研修については「労働時間としてカウントすべきか否か」という問題がつきまといます。

研修と労働時間について解説します。

 

はじめに

労働者のスキルアップを目指して会社が主導して研修や教育訓練を実施することはよくありますが、

その研修が労働基準法上の「労働時間」に当たるか否かについては判断が難しいこともあります。

以下、研修と労働時間の関係について解説します。

 

労働時間の定義>

労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことをいいます。 使用者の明示または黙示の指示により

労働者が業務に従事する時間は、労働時間に該当します。ちなみに黙示の指示とは下記を指します。

 

直接命令はしていないが、雰囲気的に断ることが困難であったり、参加しないと人事評価でマイナスとなったりと、

実質的に強制しているのと変わらない状態

 

研修・教育訓練の取扱い

研修・教育訓練について、業務上義務づけられていない自由参加のものであれば、その研修・教育訓練の時間は、労働時間に該当しません。

しかし研修・教育訓練への不参加について、就業規則で減給処分の対象とされていたり、参加しないと業務を行うことが

できなかったりするなど「事実上参加を強制されている」場合には、前述した黙示の指示があるものとして労働時間に該当します。

以下に具体例を記載します。

 

【労働時間に該当しない事例】

●終業後の勉強会で、参加の強制はせず、また参加しないことについて不利益な取扱いもしないもの

●労働者が自ら申し出て、会社の設備を無償で使用することの許可をとった上で、

一人でまたは先輩社員に依頼し、使用者からの指揮命令を受けることなく勤務時間外に行う訓練

 ※ただし、同調圧力などにより居残り訓練が実質的に強制されている場合は労働時間となる場合がある

●会社が外国人講師を呼んで開催している任意参加の業務とは関連性がない英会話講習。

 

労働時間に該当する可能性が高い事例】

●仕事に使用する技術や資格を習得するために会社から指示された研修

●書籍等を会社が提供し、読書と感想文の提出を義務付ける場合の読書およびレポート作成時間

●休日に参加するよう指示された社外研修で、後日レポートの提出も課されるなど実質的な業務指示で参加する研修。

●自らが担当する業務について、あらかじめ先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ

実際の業務に就くことができないとされている場合の業務見学。

●会社が出席を命じた研修兼懇親会

 

会社における「研修・教育訓練」の取扱いについて

「研修は労働時間ではない」と取り扱う場合には、まず上司からの強制・指示、事実上の強制がないように注意してください。

また、仕事に必須のスキルを学ばせるものは原則として労働時間として取り扱うほうが間違いないでしょう。

 

その他、通常の勤務場所と物理的に違う場所で研修を行ったり、仕事用ユニフォームを一旦着替えてから研修を受講するよう

ルールを設けたりといった「通常労働との形式上の違い」を明確化することも有効です。

 

また、職場で居残りして訓練などをしている場合も「会社設備を利用した訓練の許可申請書」などの書面を用意することも良いでしょう。

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