2025年07月14日
LEDへの取り替え費用の取扱い
蛍光ランプからLEDへの移行が進んでいます。この流れの中で、LEDへの移行費用の税務上の取扱いに注目が集まっています。
はじめに
令和5年秋にスイスで「水銀に関する水俣条約第5回締約国会議(COP5)」が開催されました。
この会議では、一般照明用の蛍光ランプの製造・輸出入を令和9年12月末までに段階的に廃止する合意がなされました。
今後、蛍光ランプからLEDへの移行がさらに加速します。それに伴い、LEDへの移行費用の税務上の取扱いが
重要な課題となっています。
「修繕費」か「資本的支出」か?
法人が事業所などで使用している照明設備の交換に関する問題を考えてみましょう。従来の蛍光ランプからLEDに
交換する場合の支出は、税務上どう扱うべきでしょうか。
法人税法上「修繕費」として損金算入できるのか、それとも「資本的支出」として資産計上し減価償却の対象とすべきなのか、
実務上よく問題になります。「修繕費」とは、資産の原状回復や維持管理のために要する費用を指します。この支出は
原則としてその事業年度の損金に算入できます。
一方で、資産の価値を増加させたり、使用可能期間を延長させたりするような支出は「資本的支出」に該当します。
この場合は、原則として固定資産に計上し、減価償却により費用化していきます。では、蛍光ランプからLEDへの交換は
どちらに該当するのでしょうか。
国税庁の質疑応答事例では修繕費
LEDは、一般的に蛍光ランプに比べて省エネ性能に優れています。また、寿命も長いという特徴があります。
このため、「機能の向上」や「使用可能期間の延長」が認められるケースが多いと考えられます。そのため、一律に
修繕費と認めるのは困難です。場合によっては資本的支出に該当する可能性もあります。
しかし、国税庁が公表している「法人税に関する質疑応答事例」に重要な記載があります。この事例では、照明器具の
蛍光ランプをLEDに交換する場合について言及しています。当該交換が修理や改良等の目的により行われ、かつ、その金額が
通常要すると認められる程度であれば、その費用は修繕費として取り扱えるとしています。このため、LEDへの交換が
資産の維持管理や老朽化対策といった通常の修繕の範囲内で行われた場合には、修繕費として処理できると考えられ、
実務上重要なポイントです。
大規模なものや全面的な照明システムの更新の際には注意
一方、より大規模な更新には注意が必要です。建物全体や複数フロアにわたる大規模なLED化を行う場合は
異なる取扱いとなる可能性があります。また、照明の配置変更等を含む全面的な照明システムの更新も同様です。
性能の大幅な向上や利便性の飛躍的な改善を伴う場合は、資本的支出として取り扱われる可能性が高まります。
このような場合は、会計処理に十分な注意が必要です。
修繕費か資本的支出か、判断の基準
蛍光ランプからLEDへの交換に係る費用の取扱いは、その目的や内容、規模によって判断が分かれます。
「修繕費」となる場合と「資本的支出」となる場合です。
国税庁の質疑応答事例を参考にすると、現状維持の範囲内である場合や、金額も通常の範囲内であれば、
原則として修繕費として処理できます。ただし、大規模な更新や機能の大幅な向上を伴う場合は、資本的支出として
取り扱う場合があります。取引の実態に即して、適切な税務処理を行うとともに、適切な会計処理と必要書類の保存により、
後日の税務調査等においても安心できる対応が可能となります。