2025年12月11日
社員旅行の給与課税有無は総合判断
企業が社員旅行の費用を負担したことで従業員等が受ける経済的利益は、一定の要件を満たせば
原則給与課税の対象外となります。
はじめに
社員旅行は、従業員の慰安・親睦を目的とした福利厚生の一環として広く実施されています。社員旅行に係る費用は
税務上どのように取り扱われるのでしょうか。
社員旅行の税務上の位置づけ
税務上は、従業員が会社から経済的利益を受けた場合には原則として給与課税の対象となりますが、社会通念上
一般的な社員旅行と認められるものについては、福利厚生費として給与課税の対象外とする取扱いが認められています。
この社会通念上一般的と判断されるための基準として、国税庁は以下のような要件を示しています。
1. 旅行期間がおおむね4泊5日以内であること
2. 全従業員の50%以上が参加していること
3. 会社の負担が常識的な範囲内であること
※実務上の目安としては、一人当たり10万円程度までが妥当な範囲とされています。海外旅行でこれを超える場合は、
超過部分について給与課税が必要になる可能性があります。
これらの条件を満たしていれば、社員旅行の費用を会社が負担しても、従業員個人への給与課税は不要と
されるのが原則です。ただし、この「50%以上参加」という基準を機械的に当てはめるのではなく、実際には
参加率が50%未満でも給与課税不要と認められる場合があると国税庁が例示しています。
38%参加でも非課税のケース
国税庁が公表しているタックスアンサーでは、次のようなケースが取り上げられています。
ある会社が年1回の親睦旅行を実施し、全従業員に参加を呼びかけたところ、参加者は全体の38%にとどまりました。
旅行は3泊4日で、費用の一部を従業員も負担。目的は社内の親睦と勤労意欲の向上であり、旅行内容も社会通念上
一般的な範囲内でした。
この事例について国税庁は、「旅行の目的、行程、規模、費用負担の割合等を総合的に勘案して、
一般的なレクリエーション旅行と認められる場合には、参加率が50%未満であっても給与として課税しなくて
差し支えない」と明示しています。
つまり、50%という数値はあくまで目安であり、絶対条件ではないということです。たとえ参加率が低くても、
会社全体として従業員に公平に機会を与え、福利厚生の一環として社会通念上妥当と認められる内容であれば、
給与課税は不要とされています。
実務上の留意点
社員旅行を実施する際には、社内全体に対する公平性と費用の妥当性を明確に示す点が重要です。案内文書や
参加者リスト、旅行目的、費用分担の記録などを社内に残しておけば、税務調査時にも非課税扱いの合理性を
説明しやすいと考えられます。
国税庁の見解は「50%以上」という形式要件にとらわれず、実態を重視する方向にシフトしているのかもしれません。
参加率が低くても、全社的な福利厚生としての位置づけと社会通念上の妥当性を意識した運用を心がければ、
給与課税を回避できる余地は十分にあるといえるでしょう。一方で、役員や従業員の大半が親族などで
構成されているなど特殊な場合には、上記要件を満たしていても給与課税の対象となる可能性もあるといえるでしょう。



