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弁護士法人アルファ総合法律事務所

「社宅制度」の適切な 運用について

2026年03月09日

「社宅制度」の適切な運用について

社宅制度は、従業員に対する福利厚生の中でも、節税効果を会社と従業員にもたらす強力な仕組みです。

適切に運用しましょう。

 

はじめに

「社宅制度」に関しては、所得税と社会保険で現物給与としての評価基準が大きく異なるため、注意が必要です。

 

所得税:賃貸料相当額の50%ルール

所得税法上、会社が従業員に住宅を無償または低額で貸与した場合、その差額は現物給与として課税の対象になります。

この課税を避けるための条件は、所定の方法で計算した「賃貸料相当額」の50%以上を従業員から

社宅使用料として徴収することです。この「賃貸料相当額」は、一般的な家賃や市場価格ではなく、

主に固定資産税の評価額を基に算出されます。具体的な計算式は複雑ですが、主に以下の3つの合計額となります。

 

1. 建物の固定資産税課税標準額×0.2%

2. 12円×(建物の床面積÷3.3㎡)

3. 敷地の固定資産税課税標準額×0.22%

 

賃貸料相当額は、通常の市場家賃よりもかなり低く算出されることが多く、「50%ルール」を満たすハードルは

比較的低い傾向にあります。これにより、従業員から徴収する家賃を低く抑えつつ、差額が非課税になることで、

従業員の手取り額が増えるメリットが生まれます。

 

社会保険:標準報酬月額に加算

社会保険の保険料算定の基礎となる標準報酬月額には、社宅の貸与による経済的利益を算入する必要が

ある点に注意が必要です。社会保険上の評価額は、所得税とは全く異なり、都道府県ごとの

「畳一畳あたりの価額」に基づいて算出されます。

 

現物給与の額=

都道府県ごとの一畳あたりの価額×居室用の畳数

 

例えば、令和7年4月以降の東京都の場合、畳一畳につき2,830円を乗じた金額が1月当たりの住宅の

利益の額として標準報酬月額に加算されます。一畳あたりの価額は地域差が大きく、

東京や大阪などの都市圏では一畳あたりの価額が高く設定されており、所得税の賃貸料相当額より

高額になるケースも珍しくありません。

この計算で算出された金額と実際に従業員から徴収している金額との差額を、現物給与として標準報酬月額に

加算する必要があります。

 

所得税ベースで社宅家賃を定めた場合、税金の負担は生じなくても社会保険の負担は発生する可能性が

ある点に注意が必要です。この場合、従業員負担だけでなく会社負担も発生するため、社会保険の取扱いも

十分加味したうえで社宅家賃の設定を行うことに留意しましょう。

 

実務上の簡便運用とそのリスク

実務上、賃貸料相当額の厳密な計算が困難な場合、家主への支払家賃の50%を徴収する運用も見られます。

しかし、これは法的根拠に基づくものではありません。

 

税務調査や社会保険調査では、本来の計算方法での再計算を求められ、差額について追徴課税や社会保険料の

遡及徴収(最大2年分)を受けるリスクがあります。特に社会保険料は会社負担分も発生するため、

影響が大きくなります。適切な社宅規程を整備し、法令に基づいた運用を行うことが重要です。

 

【ご注意ください】

・ 役員社宅は計算方法が異なります(特に豪華社宅は要注意)

・ 132㎡以下の住宅には簡便な計算方法があります

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