2026年04月13日
「つながらない権利」の実務的制度化について
ガイドライン策定も検討されている「つながらない権利」について、企業がどのような制度をつくれば
実務的になるかについて考察します。
はじめに
チャットツールやスマートフォンの普及により、「勤務時間外でも業務連絡が見えてしまう」
環境が当たり前になりました。便利さの反面、私生活でも業務から完全に解放されないため
メンタル不調や、潜在的な時間外労働(不払い残業)の発生等が問題視されています。
以下、近年ガイドライン策定も検討されている「つながらない権利」について、どのように
実務的な制度をつくれば機能するか考察します。なお、現時点で「つながらない権利」は
日本の法律上明文化されていませんが、厚生労働省でガイドライン策定が検討されており、
今後の動向を見据えた対応が求められます。
全社的なルールの公表
まず、就業規則・社内規程・イントラ等で、勤務時間外の連絡の扱いを明文化し、全社に周知すると
よいでしょう。ここで重要なのは、禁止・例外・代替手段をセットで示す点です。
- 原則:勤務時間外における即時の返信義務なし/翌営業日の対応で良いと明記するなど
- 例外:重大障害、事故、顧客影響が大きい緊急案件など(定義と判断者を明確化)
- 代替:緊急連絡ルート(電話番号、当番表など)
曖昧さが残ると、現場は結局「念のため反応する」に流れます。例外を絞り、判断権限
(誰が緊急事案と決めるか)を決めることで、運用が安定するでしょう。
チャットツールの表示名設定
実務的に効くのが、表示ルールです。たとえば、氏名の後ろに対応可能時間表記を推奨する方法です。
例:「山田(対応:平日9:00–18:00)」
「佐藤(至急は当番へ/通常は翌営業日)」
チャットツールの中には離席中、集中時間、退勤などの状態を示せるものもあります。
特にリモート環境では、視覚的に現在の状態をわかりやすくするのが効果的でしょう。
評価・人事との切り離し
制度化で最も大事なのは、勤務時間外に反応しなくても直接的・間接的を問わず不利益に
しないことです。実際「つながらない権利」の議論では、評価に影響するかもしれないという
心理的圧力の取り扱いが鍵となります。社内ルールとして、以下のように発表し実行力を
高める方法があります。
- 勤務時間外に返信しなくても評価に反映しない
- 緊急対応は当番・役割で回し個人の善意に依存しない
- 管理職向けに「夜間・休日の指示を出さない」行動基準を設ける
対外的な説明
社内のルール以外に、対外的な説明も必要です。「当社は従業員の休息確保のため、
原則として営業時間外の個別対応は翌営業日とします」「緊急時は24時間窓口(当番)へ。
通常連絡はチャット/メールで受付します」などのルール説明をクライアントにするとよいでしょう。
時間外対応の実態調査と検証
営業時間外の対応事案を記録し、定期的に次のような内容を調査し、検証、評価も重要でしょう。
- 例外の発動条件と記録(なぜ緊急か、誰が判断したか)
- 時間外対応に対する実態の聞き取り調査、メッセージのログ調査
- 担当変更、業務分担の見直しなどにより時間外対応を軽減できるかの検討



