2018年03月27日
平成29年5月26日、「民法の一部を改正する法律」が成立し、大規模な民法改正が実現することになり、法定利率についても大きな変更がなされることになりました。
法定利率とは、利息が生じるべき債権について利率の定めがない場合に適用される利率のことです。当事者間で利息についての利率を定めていなかった場合、予め利率を合意できない事情があった場合(たとえば、交通事故による損害賠償請求などの事前の取決めが考えられない場合です)などの利息は、法定利率によって算定されることになります。
この法定利率は、約120年前から年5%ですが(現行民法404条)、低金利が長く続く現状との乖離から、今回改正され、変動法定利率が採用されました。
変更のポイントは、
①法定利率を5%から3%に引き下げる。
②商事法定利率6%(現行商法514条)の廃止(改正民法の3%に統一)
③法定利率は、法務省令で3年ごとに変更される。
です。
改正民法の施行により、また施行後も3年ごとに、法定利率が変わるのです。そして、利率が変動するということは、どの時点から改正民法が適用されるのか、改正後はどの法定利率が適用されるのか、という判断基準時が非常に重要ということになります。
まず、改正民法の施行日(改正が効力を生じることになる日をいいます)は、公布日である平成29年6月2日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。まだ施行日は定められていませんが、原則とおりならば平成32年6月頃までに施行され、改正民法が適用され始める(例外もありますが)と考えていいことになります。
つぎに、変動した利率のうち、どの法定利率が適用されるかの基準時は、
①利息を生ずべき債権について、別段の意思表示がないときは、その利率は当該利息が生じた最初の時点の法定利率による。
②金銭債務の不履行があった場合の損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った時点の法定利率による。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率による。
③将来取得すべき利益についての損害賠償額の計算において中間利息を控除するときは、損害賠償の請求権が生じた時点の法定利率による。
とされています。
個別に都度、慎重に確認する必要があるかと思いますが、重要なのは、
その判断基準時より後に法定利率が変動しても、適用される法定利率は変わらないことです。
また、法定利率の規定は、当事者間で異なる合意があればその合意が優先される、任意規定ですので、あらかじめ契約上利率を取り決めておくことが重要であることになりますが、実務上は事業者間の契約の多くで利率の取決めがなされていることからすると、実際に法定利率が適用される場面としては、非事業者間の契約関係や、不法行為による損害賠償請求の場面(逸失利益の額は算定上特に高額化することになります。保険料との関係でも大きな関心事です。)等が考えられます。今後は、どの利率が適用されるかを意識した債権管理が求められることになるといえます。